水谷が見せつけた、卓球のすごさ!
卓球は多彩な技とスピード感あふれるラリーが魅力の競技。しかし、その一方でボールが小さく卓球台も大きくないため、選手たちの技術の高さが観客に伝わりにくいという側面もある。そこでサービスの回転の種類やフォアハンド・ドライブの威力で群を抜く水谷隼選手が、ファシリテーターの為末大氏に世界トップクラスの卓球のすごさを伝授。「侍ハードラー」として名を馳せた元プロ陸上選手の為末氏は果たして水谷選手の「魔球」を打ち返すことができるのか!?
水谷隼のサービスは約20種類
為末:Tリーグの開幕戦を会場で観たんですけど、卓球ってテレビで見る以上にものすごい迫力がありますよね。
水谷:そうだと思います。女子はスピード、男子はラリーの迫力にみなさん、驚かれますね。
為末:欲を言えば、ボールの回転数や打球の速さ、選手の体力の消耗度などがもっと可視化されると、今以上に試合観戦が面白くなるとも思いました。例えばサービスの種類はどれくらいあるんですか。
水谷:僕の場合、回転の種類で言えば20種類くらいあります。
為末:えっ、そんなにあるの!? 観客席やテレビで観ているだけじゃ、わかりませんね。
水谷:卓球のボールは小さくて直径40mmしかありませんから、見えないのも当然です。でも卓球はボールの回転がものをいう競技なので、肉眼で捉えきれないさまざまな回転がボールにかかっています。ちなみに基本は上回転と下回転で、そこに左右の横回転が加わり、右横回転や右横下回転など微妙な回転の違いが生まれます。
為末:それって今、この場で実際にボールを打ちながら教えてもらうことはできますか。あれ、僕たちが使っているこのテーブル、よく見たら卓球台じゃないですか!
水谷:いや、最初から卓球台だと思ってましたよ(笑)。
ノーマルな横回転サービスと逆横回転のYGサービス
水谷:実はちゃんとマイラケットを持って来ているんです。まずは回転の変化がわかりやすいサービスを出してみましょうか。最初はフォアハンドの横回転サービスから。これはサービスの種類の中でもノーマルな部類で、相手コートにワンバウンドした時、相手選手の右側、つまり卓球台の外側に逃げるように曲がって行きます。
水谷:次にお見せするのはYGサービスです。YGは「ヤングジェネレーション」の略で2000年代に活躍したオーストリアのヴェルナー・シュラガーという選手が使い始め、それを当時のヨーロッパの若手選手が真似て世界中に広まったと言われています。先ほどの横回転サービスとは逆の横回転をかけるので、相手コートにバウンドした時には相手選手の左側、つまり卓球台の内側に曲がって行きます。回転数も増えるので相手はレシーブしにくくなります。
フォアハンド・ドライブは1秒間に180回転!?
水谷:卓球の打法でもっとも回転がかかるのがフォアハンド・ドライブです。トップ選手になると1秒間に160〜180回転とされていますが、同じフォアハンドでも回転のかけ方によって軌道やスピードが異なるので数字は一概に言えません。僕はもともとフォアハンド・ドライブが得意なんですけど、ここ数年、世界の卓球はバックハンドが試合展開の軸となり、バックハンドが強くないと勝てないので、僕もフォアハンドだけでなくバックハンドも強化しています。
為末:フォアハンド・ドライブ、すごい威力ですね!
水谷:為末さん、一緒に打ちませんか。サービスを出すのでレシーブしてみてください。
為末:えーっ!捕れるかなぁ。
為末:いやあ、観るとやるとでは大違いですね。すごくボールが曲がるし、ラケットに当てられたとしてもまともにレシーブが返りません。実際に水谷選手のサービスを受けてみて、それだけでも卓球選手のすごさがわかりました。
(次回に続く・・・)
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