水谷隼がアスリートの声を代弁 松下浩二チェアマンと本音トーク - Athlete Channel(アスリートチャンネル) - gooスポーツ

goo スポーツ

Athlete ChannelTM

Athlete

2019/2/1

水谷隼がアスリートの声を代弁 松下浩二チェアマンと本音トーク

 2018年10月に開幕した卓球新リーグ「Tリーグ」は現在、全国各地でレギュラーシーズンの真っただ中。卓球人気が追い風となり話題を呼んでいる同リーグとは言え何しろ初年度、木下マイスター東京から参戦するエースの水谷隼は多くの課題を挙げている。Jリーグ理事でもあり、陸上界を含め数々の競技の現状を知る為末大によるインタビューでは「チームの人気による集客の差」、「ホーム戦の充実」、「応援スタイルの確立」とその課題を指摘。そこでTリーグ立ち上げの立役者であり、日本初のプロ卓球選手だった松下浩二チェアマンを招き、水谷選手と課題解決の道を探ってもらった。

編集者 高樹ミナ
スポーツライター

試合中の演出はどこまでOKか…

為末:松下チェアマン、Tリーグが開幕して約3カ月が経ちますが手応えはいかがですか。

松下:昨年10月24、25日に両国国技館で開幕戦をして、運営面では少しずつ良くなってきていますが、演出の部分ではまだ足りていないと感じています。演出は同じアリーナ競技ということでBリーグや米国のNBAなどを参考にしながら、いろいろとトライしている段階です。

為末:同じアリーナ競技でもバスケットボールと卓球では違うと思いますが、一番の違いって何ですか。

松下:競技中に演出ができるかという点ですね。バスケットボールは、プレーの最中に音楽がかかっていたり、応援が賑やかだったりしてもOKなんですよね。でも卓球の場合は試合中に音が鳴っているとどうしてもプレーに影響が出てしまいますので、競技と演出は基本的に分けることになります。卓球ならではの演出としては暗転があって、ワールドツアーや世界選手権などの国際大会ではよくあるんですけれども、Tリーグでも一部の試合で会場を暗くしコートだけに照明を当てる演出をしています。今後は暗転させた試合を増やしていきたいと考えていますが、一方で選手にとって良いのかどうかという懸念はあります。水谷選手、どうですか。

水谷:会場の雰囲気は良くなりますけど、個人的には暗い中でプレーするのが得意じゃないので、あまり歓迎しません。卓球のボールはただでさえ白くて小さいのでより見えにくくなるからです。

松下:もう少し照明を強くするとか…。でも、そうすると眩しかったり反射したりというのがありますよね。

水谷:それはありますね。

松下:水谷選手の言う通り、どんなに魅力的な演出をしても、それがプレーの妨げになると選手のパフォーマンスが落ちて、結局は観客が楽しめなくなってしまいます。それでは本末転倒なので、やはりリーグ側としては選手が最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えることを優先しなくてはなりません。暗転もちょっと考えます。音についてはどう感じますか。

水谷:音に関しては、僕はさほど気になりません。これまでドイツや中国、ロシアのリーグでプレーしてきましたけど、海外では試合中も客席がざわざわしていたり、試合が白熱すると野次が飛んだり、けっこううるさいですからね。僕、野次も気になりませんよ。むしろ野次が聞こえる方が燃えるくらいです。

課題は応援の仕組みづくりとテクノロジーの活用

為末:こんな応援をしてもらえたら嬉しいという希望はありますか。

水谷:客席に応援の音頭をとってくれる人が常に5人くらいいて、先頭に立って応援してくれたら良いなと思います。そうすれば一気に盛り上がると思うんですよね。あとチームによっては応援ソングもあって、僕の所属する木下マイスター東京にも応援ソングがあるので早く浸透してくれると嬉しいです。

松下:今はまだ応援がバラバラですからね。ただそれもTリーグが根付いていけば、チームのファンが増え、応援団やファンクラブができて、応援にも一体感が出てくるのだと思います。

為末:応援の盛り上げにもつながる演出として、観客の視覚に訴えるVR(仮想現実)やAR(拡張現実)の活用もあると思います。松下チェアマン、いかがでしょう。

松下:私もVRやARはこれからの卓球にとって必要だと考えています。例えば水谷選手が打ったボールのスピードが120km/hとか、1秒間に150回転しているとか、相手選手にどこを攻められているとか、そういったスタッツやトラッキングの情報をテクノロジーの力で可視化していく。特に卓球はボールの回転や軌道が観客から見えにくく、選手たちがどれほどすごいことをやっているかが伝わりにくいので、それができたら良いと思います。実際、すでに「スマートアリーナ」といって、手元のスマートフォンでスタッツが表示されたりプレーを再現できたりするツールを準備中です。

為末:水谷選手のキャラクターに紐づいて試合を見に来るお客さんも多いと思うのですが、今以上の集客を考えた時、卓球ファン以外に新たなお客さんとつながる接点は何かありますか。例えば水谷選手の趣味つながりとか。

水谷:趣味はゲームですね。対戦型ゲームの「クラッシュ・ロワイヤル」にハマってます。あとYouTubeをよく見るので、TリーグもYouTubeを活用すると良いんじゃないかと思います。松下さんにも先日、若い世代に人気の、勢いがあるYouTuber(ユーチューバー)の話をしたところです。

松下:実は「Tリーグ公認YouTubeチャンネル(仮称)」を作るんですよ。ぜひ水谷選手にも出演してもらって、大いにバズらせてほしいですね。

為末:おっ、それはぜひ詳しく伺いたいですね。

(次回に続く・・・)

< 記事の更新予定は、こちらでお知らせします ⇒ @athlete_channel

アスリート一覧

卓球

水谷 隼(みずたに じゅん)

所属
木下マイスター東京
背番号
0
生年月日
1989年6月9日
出身
静岡県
身長/体重
172㎝/63kg
得意なプレー
ラリー
選手経歴
5歳で卓球を始める。天性の柔らかいボールタッチが持ち味。全日本選手権バンビ・カブ・ホープスの部で優勝。中学2年生でドイツに卓球留学ブンデスリーガで才能を磨く。青森山田中学・高校を経て明治大学に進学。15歳10ヶ月(当時、史上最年少)の時、2005年世界選手権で初代表入りを果たす。全日本選手権は前人未到の通算9勝。2016年リオ五輪男子団体銀メダル、男子シングルス銅メダル獲得。世界ランキング10位(2019年1月発表。自己最高は同4位)
趣味
ゲーム、筋トレ
最近ハマっていること
ゲーム(クラッシュロワイヤル、ブロッサム・ブラスト)
好きな言葉
家族
SNS
Twitter:@Mizutani__Jun

為末 大(ためすえ だい)

プロフィール
1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。
男子400メートルハードルの日本記録保持者(2019年2月現在)。
現在は、Sports×Technologyに関するプロジェクトを行う株式会社Deportare Partnersの代表を務める。
新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。主な著作に『走る哲学』、『諦める力』など。

松下 浩二(まつした こうじ)

生年月日
1967年8月28日
出身
愛知県
経歴
バルセロナからシドニーまで4大会連続でオリンピックに出場。世界卓球選手権では1997年大会で男子ダブルス銅、2000年大会で男子団体銅。日本人初のプロ卓球選手としてドイツ・ブンデスリーガでプレーした。2009年の全日本選手権を最後に引退。2017年3月 一般社団法人Tリーグを設立。2018年7月1日には代表理事/チェアマンを務める。

関連記事

おすすめの記事

^

「Athlete ChannelTMとは

アスリートとみなさんが、さまざまなテーマを通じて新たに出会える交流の場を目指しています。
アスリートのスポーツに対する想いをはじめ、趣味やプライベート、今実現してみたいことなど、アスリートから発信されるストーリーをお届けします。
【提供:株式会社NTTドコモ、株式会社Candee】