「スポンサーに気をつかうな」 gumi國光会長が考える、応援されるチームの作り方
「いつか徳島にe-Sportsチームを作り、徳島を元気にしたい」という夢を語ったたぬかな選手は、その夢の実現に向けどのようなチームを作っていけばいいのか、少し頭を悩ませているようだ。多くの人気スマホ・ソーシャルゲームを生み出す、株式会社gumiの代表取締役会長 國光宏尚氏に、強いファンを生み出すチーム作りの方法を教わった。
身内感あふれるチームを応援したくなる
たぬかな:チームを作ったら私が応募者の面接もしていこうと思っているんですが、どんな視点で人を選ぶべきなんでしょうか。
國光:まず言えるのは、思いが強い人。なぜそれがやりたいのか、という部分だよね。そこには人それぞれの原体験があるはずだから、そのストーリーを深掘りすることを意識したらいいと思うよ。でも同じくらい大切だと思うのは、仲がいいチームを作れるかどうか。
たぬかな:仲がいいチーム…、仲がいいほうがもちろん楽しそうですけど…。
國光:人を集めたり、ファンを作るには「あいつら楽しそうだな」って思われることが意外と大事なんだよね。その関係性をファンが楽しめるようになると、だんだん身内みたいな感覚が芽生えてくる。内輪受けって侮れなくて、友達がテレビ出てたらなんでも面白いじゃない…。そうなったら強いよね。
たぬかな:確かに!
國光:アイドルグループでもそうでしょ。嵐だって、あの5人の関係性がわかっているから、彼らが台湾に行ったり、何かを作っている様子を見るだけで面白いんだよね。あとはそれぞれのキャラ立ちも大事。
たぬかな:キャラ立ちかぁ。メディアに出るときを考えて、しゃべりが上手なメンバーだといいなとは思っていますけど。
國光:しゃべりがうまいメンバーがいてもいいし、下手なやつがいてもいいんじゃない。普段はすごいおとなしいのに、ゲーム中はすっげえ口悪いとかさ。そういうのが見る人の心をつかむと思う。
たぬかな:口が悪くてもいいんですかぁ! 私も元々すごく毒舌で、でもある時にすごく怒られて、批判もされて。チームとして応援してもらいながら、スポンサーを獲得して行くためには行儀の良さって大事じゃないですか。
國光:結局、そういう嘘って、ネット社会ではすぐにバレてしまうんだよね。
「節度なんて気にするな」ありのままに共感するファンをつかめ
たぬかな:素の姿が大事なのは何となくわかるんですけど、ある程度の節度はあったほうがいいのかなって思うんですよね。
國光:節度なんて、いらんいらん! 要はファンって、その人を応援したいと思えるかどうかで増えて行くんだよ。AKB48の総選挙もそうでしょ。チームの夢が「e-Sportsで世界一を獲る」だとしたら、そこまでのスモールステップを立てて、ひとつひとつクリアして行く過程を一緒に応援してくれるのがファンだから。猫かぶってる姿なんかよりも、素をさらけ出して頑張ってるやつのほうが応援したいと思わない…。
たぬかな:う~ん、わかってはいるんですけど…。私自身が批判されてすごくつらかった経験もあるので、まだ踏み切れないところがあるのかも。e-Sportsって、まだプレーヤーのイメージがそこまで良いわけではないと思っているんですよ。だから大会での表彰のときにパーカーの紐をいじりながらふらふらしてる人とか見ると、もっとちゃんとして欲しいって思っちゃう。スポーツ選手ではこんな人いないのに、って。
特に徳島弁って元々ちょっと口が悪く聞こえてしまいがちなところもあるんですよね。だから、徳島のチームをかっこいいと思ってもらうためには、まず身だしなみを整えて、インタビューでの受け答えも品があって、ってどんどん私のなかでイメージ戦略を立ててしまうんです。
國光:それはすべてスポンサーのためという考えなのかもしれないけど、正直人気があったらどんなに口が悪くてもスポンサーはつくよ(笑)。ただその人気は、好感度って意味じゃない。好感度が高いってことは、嫌う人がいないという意味で、ファンが多いということではないからね。
たぬかな:ファンを増やすにはどうしたらいいですか。
國光:自分を持っている人、何かに挑戦している人に強いファンはつくと思ってる。で、これからのコンテンツは、広いターゲットに向けられるものではなく、特定の層にだけ「刺さる」ものになって行くから、たぬかなさんのありのまま、チームメンバーのありのままを応援してくれる人のことだけを考えて行くのがいいと思うんだよね。
たぬかな:こんな自分でも認めてくれる人やスポンサーさんを大切にしていけばいいのかな。
國光:そう。スポンサーだって、一社から一億円もらうのはハードルが高いけど、一人一万円払ってくれるファンが1万人いたら一億になるし、一人1000円で10万人でもいい。これからは強いファンを作って、ファンから直接お金をもらう仕組みが増えて行くと思っているから、今後チームを作るならそういうマーケティングをして行くのがいいんじゃないかな。
<写真・撮影:市川 亮>
(次回に続く・・・)
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