競技の魅力をアートに…藤森由香が考えるスノーボード普及策
学生時代からスノーボードの第一線で活躍を続けている藤森由香選手は、2019年に入って大会以外の面にも活動の幅を広げている。スノーボーダーとして新たな挑戦に臨んでいる彼女が、競技に感じる魅力や普及に対する想いを明かした。
競技の魅力を一番伝えやすい映像
2019年はスノーボードの現役選手としての活動に加えて、講演会で今までの経験を伝えたり、スノーボード関連の撮影やイベントに参加したりもしています。アメリカに五輪の金メダリストの知り合いがいるのですが、「日本に撮影で行くから一緒に撮影しよう」と誘ってくれたのがきっかけです。私のスノーボードの技術を映像化してスノーボードの楽しさを伝えられることになるので、これはすごく嬉しいことだなと思って、ポジティブに取り組んでいます。
そういったインターナショナルな活動ができていることは、キャリアの中ではプラスになっていますが、それが競技ベースの大会だけとなると精神的にも辛い部分はあるんですよね。しんどいこともある中で、大会以外での分野でも何かやって行きたいという思いは以前から持っていたんです。なので、2019年は念願が叶って活動の幅がだいぶ広がった形になりますね。良いスタートが切れたかなと思います。
今までは選手という立場で滑り続けて来ましたが、スノーボードを普及したいという想いも持っていました。子どもたちや一般の方々を対象としたレッスンもして来ましたし、今後も様々な活動を行なうことによって、スノーボードを面白いと感じてくれる人が増えてくれれば嬉しいです。
その中で、競技の魅力を一番伝えやすいのは映像だと思っています。父は私が小さいときに、家で毎日スノーボードの映像を流していました。私はそれを見て「こういうジャンプがしたい」、「こういう山を滑りたい」と感じていましたし、同じように映像から憧れを持って競技を始めた選手は多いはずです。
私は生まれたときからスキーやスノーボードができる環境が身近にありましたけど、最近では都会出身のウインタースポーツの選手が、五輪でメダルを獲ることも珍しくないんですよ。
雪国ではない国で育った選手は、自然にウインタースポーツを始めることは難しいので、親の影響で始めるか、テレビなどで映像を見て始めるかのどちらかだと思います。そういった意味でも、やはり映像の影響力は強いのではないでしょうか。
今は五輪などの世界大会がテレビなどで放映されていて、一般の方にもスノーボードが伝わりやすくなっています。一方で、DVDやビデオなどの「作品」が減って来ているのは寂しさを感じます。Instagramなどで手軽な映像は配信されているものの、作品として世に残っているものは少ないので、そういったことにも挑戦して行きたいと考えています。
アーチストに受けた影響と、スノーボードの魅力
創作活動をする上では、他の分野の方から影響を受けることも大事です。私は知り合いに、小松美羽さんという版画家の本を紹介してもらったのですが、その方の作品に対する情熱に強く惹かれました。小松さんが大切にしている言葉なども書いてありましたが、それまでアーチストがどのような気持ちで作品を作っているのかはほとんど知らなかったので、なおさら影響力が強かったんです。
アートには理想があっても終わりはなくて、それはもちろんスノーボードでも同じです。それでも映像作品では「完成」をしなければいけないので、その作業はとてもハードなのではないかと感じます。私はそういったアートには挑戦したことはないですけど、機会があれば絵を学んでみたいですね。今のままでは妖怪みたいな絵しか書けそうにないので(笑)。
小松さんはタイミングや予兆など、科学では解明できないような第六感を大切にされて来て、その結果が今に繋がっている方です。アーチストはなかなか評価をされるのが難しい世界ですが、小松さんは30歳くらいになってから世界に評価され始めています。コレクターが彼女の作品を数億円で買うくらいなので、実際に絵を書いていただくことは難しいですが、機会があればぜひ教えていただきたいですね。
私は映像などでの表現の活動なども交えて、スノーボードを見る人だけでなく、やる人も増えてほしいと願っています。やる人が増えることによって、結果的には見る人も増えますから。スノーボードに感じる魅力は人それぞれ違うはずですが、私は自然の中で気持ちよく滑ることで、ストレスが発散できるのが魅力だと思っています。非日常的なスピード感も味わえますし、自然の中で遊べるスポーツは意外と少ないんです。
特に冬になると、外に出たくなくなる人も多くなると思いますが、そういった中でもワイワイと楽しめるのがスノーボードです。もちろん最初は寒さにも苦労しましたし、トレーニングが辛い時期もありましたけど、それでもスノーボードをする時間はとにかく楽しくて、我を忘れてしまいます。
もちろん風を切ってスピードを出したり、技を決めたりすることは自己満足の世界ではあります。ただ、その自己満足が気持ち良いんです。怪我のリスクはありますが、良い運動になるので健康にも効果的ですし、その楽しさをもっと多くの方に知ってもらいたいと思っています。
<写真・撮影:山本晃子>
(次回に続く…)
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