美濃越舞の思いに応える! テニス界の課題を田村淳が解決
プロテニス・プレーヤー美濃越舞選手が明かすテニス界の現実と課題、前回では「なかなか観客が集まらない」という悩みを打ち明けた。今回、聞き手の田村淳さんがこれの解決案を提示するなど、語られた課題にどう対応して行くか…2人で話し合った。
WTAランキング100位の壁
田村:今現在、日本テニス界が抱える問題はあるんですか。
美濃越:選手の課題としては、なかなかトップ100と呼ばれる100位以内に、女子だと大坂さん以外はいないんです。そういうところは日本の課題ですね。
田村:そこに入っている、入っていないのでは全然違うんですか。
美濃越:出られる大会のレベルが変わってきますから。ITSとWTAというふたつの管轄があって、WTAという方に出られるとすごくレベルが高いし、大会にホスピタリティがついていたり、賞金もポイントも高いのですが、そっちをメインに戦えるんです。ただ、そうではないと下のレベルで戦わないといけない。100位以内に入っていれば、ほぼ確実にそうした大会でプレーできるんですよね。
田村:大坂選手のような選手が出てくれたら、追随して日本の選手も頑張ろうとはなるじゃないですか。でもなかなか100位以内に入れないというのは、日本の小さい頃からのテニス教育がうまくいっていないからなのでしょうか。
美濃越:体格的にも小さいというのと、外国人の選手は15、6歳から身体が大きいので成長が早いというのはあるんですよね。20歳ぐらいの時にはすごく成長していて。
田村:昔、マリア・シャラポワさんとどこかの局ですれ違ったんですけど、すごく大きいですよね。「普段はモデルやっています」と言っていましたけどモデルさんにしては体格が良くて。
美濃越:肩幅がすごいですもんね。もちろんそれだけではなくて、100位以内に入っていた日本選手もいるんですけど、1年で落ちてしまうこともあります。そこに行くだけでもすごいことなんですけど、「居続ける」ことも難しいんです。私もそこまで行っていないので、そこの壁はちょっとわからないんですよね。
ただ、そこまで行くのにどうすれば良いかというところを指導してくれる方もほとんどいない状況なので、何をしたら良いかがわからないというのもあると思います。
田村:コーチが担うところが大きいんですね。
美濃越:そうですね。
スポンサーがSNSのメッセージから来る?
田村:テニスをする環境面やマネジメントのシステムはどうなんでしょう。話を聞いていると全部自分でそろえたり、スポンサーも自分で見つけたりしないといけないんですよね。
美濃越:そうですね。
田村:自分でスポンサーを見つけに行くのは、どうするんですか。
美濃越:自分自身がというよりかは知り合いの方が繋いでいただいたりとか、マネジメント会社に所属すればそこが代わりに見つけてくれたりとか。
田村:そこまで行けたら良いですよね。そこまで行けない人は自分で探さないといけないんですよね。
美濃越:そうですね。
田村:大変ですね。逆に放送を見て「俺、支援したいんだけど」と思った人はどうやってアクセスすれば良いんですかね。「お金出しても良いよ」という富裕層の人っていると思うんですよ。「あの選手に資金提供したいんです」という会社があったとしたら、その会社はどこに連絡すれば良いんですか。日本テニス協会に連絡すれば良いんですか。
美濃越:本人のSNSだったりですかね…。
田村:本人のSNS? ダイレクメールでやりとりするんですか!
美濃越:あとは本人がどうするかなので。
田村:SNSでそういった連絡が来るのは怖くないですか。スポンサーになりたいとSNSでメッセージが来たらまず怪しいなと僕は思いますけど。
美濃越:相談できる人がいれば良いですけどね…。
東京五輪に出場できる女子プレーヤーは大坂だけ!?
田村:オリンピックが近いですけど日本のテニスはどうですか。
美濃越:オリンピックも出られる人の条件にランキング何位以内というのがあって、現状のランキングだと大坂さんしか出られないんです。ただ東京なので推薦枠があります。それで出られるとは思うんですけど、「実力で」となると今の日本の他の選手は厳しいですね。
田村:それも100位の壁ですか。
美濃越:もっと上、60位ぐらいですかね。
田村:60位以内の人にオリンピック参加権があるんですね。
美濃越:そうですね。それに加えて、国の中で何人とか決まっている形です。
田村:アメリカに60位以内の選手が10人いるからといって10人が出られる訳ではないんですね。でも日本は枠があるのに大坂さんしか枠を使えない。
美濃越:そうですね。
田村:開催国枠で入ってチャンスを掴めたら良いですよね。男子はどうなんですか。
美濃越:男子は錦織選手が一番上で、100位以内に2人ぐらい入っているので、男子の方がランキング的には可能性があります。
田村:テニス業界的には錦織選手と大坂選手がいて、盛り上がっているように思えますけど、選手たちの気持ちはどうなんですか。2人が担ってくれているから、頑張らなきゃいけないなという空気感はあるんですか。
美濃越:そうですね。2人はすごいけど私たちの周りは変わってないので。選手側も何か発信しなきゃいけないのかなとも思うんですけど。
田村:いっぱい聞いてもらえそうですけどね。こうやって会えたのもテニス界が盛り上がって来たからだと思いますし。SNSとかで発信はしているんですか。
美濃越:自分の報告とかはしているんですけど、「日本のテニス界を」となると具体的にどういうことをして良いのかと自分の中でいまいち分からなくて。そういう内容ではなかなか発信しづらいですね。
田村:テニス協会がオリンピックに向けて、テニス・プレイヤーに何かをしてくれている、というのは。
美濃越:本当にトップの何人かはナショナルチームというのがあるので、そこでそういうサポートがあったりするんですけど、私たちぐらいのランキングの人たちになると正直あまり関係ないと言うか…。
田村:プロの人から教わることができる場所が増えれば日本のテニス界はもっと盛り上がると思うし、今テニスをやってみたいという人も増えるじゃないですか。スター選手が出てくると。そんな時に日本の未来のテニス・プレーヤーに向けて何かできることはないんですかね。
美濃越:現役選手だとどこかに遠征に行っている状況が続くので、ツアー中はなかなかできないのが現状なんです。引退した選手とかであれば教室とかを定期的に開くことはできるのかなと思います。
田村:そういった人を推している方は多いんですか。
美濃越:あまりいないですね。イベントみたいなものを定期的にやっている環境もないので、どちらかというとテニスクラブに所属してそこでコーチとしてレッスンするというのが多いのかなと思います。
田村:もっとちびっことかが気軽に行けるとか、気軽にテニスに触れられる場所があると良いなと思いますけど、今後増えそうな感じはしないですか。
美濃越:増えると良いんですけどね。
田村:自分自身が試合で回らないといけないからそこまでね。
美濃越:なかなか自分がと考えると難しいところはあります。ただ、東京オリンピックもありますし、スポーツ全体に目は向けられると思います。そういう点ではテニスも注目されやすいのかなと思いますね。
田村淳がテニス好きのちびっこを集める!?
田村:今まさに絶好の機会だと思うんですよね。選手で集まって運動を起こしたら色々と声を聞いてくれたりしないんですか。
美濃越:ちょうど男子選手が昨年末にそういう動きをチームでしていて。どういう活動かは詳しく知らないですけど、テニス界をより良くするために、選手たちに聞いて協会に伝えるみたいな活動を始めたみたいです。
田村:女子もやれば良いな、と思うのですが。
美濃越:あったら良いですよね。そこはちょっとやってみたいなとは思います。
田村:そのお手伝いをメディアができたら良いですけどね。何かやってみたいこととかないんですか。もし可能だったら後押しできますし。
美濃越:やっぱり、私たちがやっている試合とかに足を運んでくれたら良いなと思っています。
田村:今のところ席が空いているんですよね。そこにちびっこを無料で招待できるんですか。
美濃越:できると思いますね。
田村:空いているならガンガン入れてしまえば良いと思うんです。生の試合を観たら変わってくると思うんですよ。テニスは気軽に行って良いものだと思えなかったですもん。富裕層とかが観ているイメージなので。ちびっこが気軽に観られる良いですけどね。
美濃越:グランドスラムとかテレビとかでやっているような大きな大会だと客席が遠いんです。ただそれ以外のほとんどの大会だとすごい近くで観られますし、普通に選手と話せるんですよ。そこらへんにいるので。気になる選手がいたら話すこともできます。
田村:「今日、調子どうですか」とか聞かれることもあるんですか。
美濃越:試合終わった後に「おめでとうございます」と言って頂けることは多いです。
田村:そうしたら、すぐにできそうですけど。学校の先生たちも課外授業として最高だと思いますけどね。
美濃越:それで観てもらって「テニスやりたいな」と思っていただけると嬉しいんです。
田村:日にちが決まっていて「ここに小学生集まれ!」ということだったら僕でもできそうなので。どのぐらい集まるかわからないですけど。テニスを子供たちに生で観せられるなら観せたいという人は多そうです。
美濃越:ぜひ来てほしいですね。
田村:ぜひ、それをやりましょうよ。僕がSNSとかでその情報を発信して、告知します!
美濃越:本当ですか。
田村:次の試合はいつなんですか。
美濃越:4月の1週目(かしわ国際オープンテニストーナメント2019)です。
田村:わかりました! ぜひやりましょう。
美濃越:楽しみにしています!
<写真・撮影:山本晃子>
(次回に続く・・・)
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